事業承継補助金とは?申請前に知っておくべき事項を徹底解説【令和2年:2020年】
2020年の事業承継補助金の申請受付が開始されました。
公募要領も公開されておりますので、こちらの内容について解説したいと思います。
この記事は、こんな疑問や悩みを解決するヒントが欲しい方に適しています。
- 事業承継を機に新事業を展開したり、新たな取組をしたい
- M&Aでの拡大を検討していきたい
令和2年(2020年)の事業承継補助金の公募が開始されました
事業承継補助金のポータルサイトが公開されています。
こちらのポータルサイトは、他の補助金よりは出来が良いですね。
事業承継補助金はどちらかというと複雑な補助金ですが、何となく伝わるようなページになっています。
事業承継補助金はどのような時に活用できる?
事業承継補助金は、対象者となるパターンが①事業承継、②M&A、の2パターン存在している都合で、他の補助金よりも少々複雑になっています。
まずは、それらのパターンと申請できる条件について解説します。
事業承継補助金を申請できる事業者は?
事業承継補助金を申請できる事業者は、以下の要件を満たす中小企業等です。
中小企業・小規模事業者であること(個人事業主を含む)
中小企業の定義は、以下となっています。
業務分類 | 資本金の額又は出資の総額 | 常勤従業員数 |
---|---|---|
製造業その他(※1) | 3億円以下 | 300人以下 |
卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
小売業 | 5,000万円以下 | 50人以下 |
サービス業(※2) | 5,000万円以下 | 100人以下 |
- ゴム製品製造業(一部を除く)は資本金3億円以下又は従業員900人以下
- 旅館業は資本金5千万円以下又は従業員200人以下、ソフトウエア業・情報処理サービス業は資本金3億円以下又は従業員300人以下
- 被承継者がみなし大企業の場合は、補助対象外となります
ご自身がどの業種に該当するか不明の場合は、こちらをご確認ください。
複数の事業を実施している場合、主たる業種になりますが、補助金の制度によって変わる可能性があります。
その場合は、補助金事務局などに問い合わせしましょう。
該当事業の実績や経験、承継会社の従業員の経験、創業セミナーへの出席経験等があること
引き継ぐ事業に対し、一定の経験や実績を求められています。
また、実務経験の期間が足りない等で経験や実績が不足する場合、自治体が実施する特定創業支援事業の創業セミナーや、中小企業大学校の後継者研修などを受講することで代替できます。
こちらは、2020年内の受講ができればOKなので、今からでも間に合わせることは可能です。
反社でないこと、補助金停止措置が講じられていないこと、その他
どの補助金であってもお決まりの、補助金対象外となる定義があります。
詳しくは、こちらをご確認ください。
事業承継補助金『Ⅰ型:後継者承継支援型』の対象者は?
2017年4月1日~2020年12月31日の間の代表者の交代を機に、経営革新を行う事業者(法人/個人事業主)が対象となります。
一般的には、高齢となった現代表の2020年内の交代を見据える企業が申請しやすいものとなっています。
一方で、もう一つのポイントとしては、2017年4月1日から2020年内の代表者の交代が対象となる点です。
つまり、既に代表者が交代してしまっているケースでも、これからの経営革新に該当する取り組みについて補助が出る可能性があります。
親父が会長で後継者が社長になってるんだけど、申請できる?という中小企業によくあるパターンではどうなるか
親子で代表取締役になっているケースなど、一般的な事業承継でよくあるパターンの具体例を、公募要領ベースで紹介します。
こちらは、補助の対象となるケースです。2017年4月1日以降に息子さんが代表取締役となって、お父様とともに共同代表となったイメージです。その場合、2020年12月31日までに、お父様が代表を退任することで、事業承継の完了、という形になります。
こちらは対象とならないケースです。
NGポイントは、2020年12月31日より後に現代表が退任していることです。
ダメな例その②。
NGポイントは、2017年4月1日より前に後継者が代表に就任していることです。
2017年以降の共同代表であれば、補助の対象となる可能性がございます。
高齢代表者の勇退が今年中に予定されている会社は、検討の価値がありますね。
事業承継補助金『Ⅱ型:事業再編・事業統合支援型』の対象者は?
2017年4月1日~2020年12月31日の間に、事業再編・事業統合を契機とした経営革新等を行う中小企業者等が対象となります。すなわち、M&Aや事業譲渡などが該当します。
対象となるスキーム:
事業譲渡、株式譲渡、吸収合併、吸収分割、新設合併、株式移転、株式交換
※この辺りは会社法の定義に従いますので、支援機関や司法書士などに相談すると良いでしょう
事業承継補助金の対象となる経費は?
基本的には、①事業承継等を機に経営革新として取り組む新たな事業、②事業承継を機に不採算事業の廃業を行う際にかかる費用、の2パターンがあります。それぞれにおいて、具体的な経費の内容が公募要領などに挙げられています。
経営革新として取り組む事業費における補助対象経費とは
費目名 | 概要 | 事前発注の可否 |
---|---|---|
人件費 | 本補助事業に直接従事する従業員に対する賃金及び法定福利費 | 〇 |
店舗等借入費 | 国内の店舗・事務所・駐車場の賃借料・共益費・仲介手数料 | 〇 |
設備費 | 国内の店舗・事務所の工事、国内で使用する機械器具等調達費用 | リース・レンタルに掛かる費用は〇 |
原材料費 | 試供品・サンプル品の製作に係る経費(原材料費) | |
知的財産権等関連経費 | 本補助事業実施における特許権等取得に要する弁理士費用 | |
謝金 | 本補助事業実施のために謝金として依頼した専門家等に支払う経費 | |
旅費 | 販路開拓等を目的とした国内外出張に係る交通費、宿泊費 | |
マーケティング調査費 | 自社で行うマーケティング調査に係る費用 | |
広報費 | 自社で行う広報に係る費用 | 展示会出展費用は〇 |
会場借料費 | 販路開拓や広報活動に係る説明会等での一時的な会場借料費 | |
外注費 | 業務の一部を第三者に外注(請負)するために支払われる経費 | |
委託費 | 業務の一部を第三者に委託(委任)するために支払われる経費 |
事前発注の可否とは、交付決定日より前の契約であっても、交付決定日以降に支払った補助事業期間分の費用は、例外的に対象とするものです。
(原則は、交付決定日より後に契約・発注しなければなりません)
廃業にかかる補助対象経費とは
費目名 | 概要 | 事前発注の可否 |
---|---|---|
廃業登記費 | 廃業に関する登記申請手続きに伴う司法書士等に支払う作成経費 | |
在庫処分費 | 既存の事業商品在庫を専門業者に依頼して処分した際の経費 | |
解体・処分費 | 既存事業の廃止に伴う建物・設備等の解体・処分費 | |
原状回復費 | 借りていた設備等を返却する際に義務となっていた原状回復費用 | |
移転・移設費用 (Ⅱ型のみ計上可) | 効率化のため設備等を移転・移設するために支払われる経費 |
個々の費用がそれぞれどんな経費が該当するか、は個別具体的な事例が多くなってしまいますので、本記事では割愛します。ご相談頂ければ、無料もしくは有料の対面相談にてご対応させて頂きます。
事業承継補助金の申請に関するスケジュールは?
事業承継補助金の申請及び採択後の流れを、紹介します。
事業承継補助金ステップ①申請準備
以下の3つの作業を、事前に実施しましょう。
これらは、事業計画を考えるより先にまずやっておくことをお勧めします。
<準備① gBizIDプライムの取得>
こちらに関しては、以下の記事をご覧ください。
<準備② 認定経営革新等支援機関の選定と相談>
事業承継補助金の申請には、認定経営革新等支援機関のサポートが必要です。
相談先の候補はいくつかありますので、自社の状況を踏まえ、相談してみましょう。
- 顧問税理士(認定を取得しているケースが多いです)
- 商工会議所/商工会(会員になってれば相談しやすいですね)
- メインバンク
- フリーの中小企業診断士
- 公的支援機関(よろず支援拠点などに相談すれば、ツテがあるかもしれません)
<準備③ 後継者要件の満たし方の確認>
実務経験が少ない後継者候補の場合、自治体が実施する創業セミナーや中小企業大学校の後継者研修を受講する必要があります。年間のスケジュールを確認しつつ、どのように要件を満たせるか確認しましょう。
事業承継補助金ステップ②申請書類の作成と電子申請
申請書は、主に事業承継後の事業計画を策定する必要があります。
認定経営革新等支援機関と相談しながら、事業計画を策定しましょう。
この辺りの申請書の作成については、いずれ別途記事を書きたいと思います。
事業承継補助金ステップ③交付決定の通知と補助事業の実施(7月末頃)
交付決定通知の受領をもって、補助事業に対応する経費の契約・発注が可能となります。
一部の経費は決定通知の前に契約しても経費に計上可能ですが、基本的には決定後の契約・発注が原則となりますので、注意しましょう。
事業承継補助金ステップ④年内の代表者の交代、及び、経費の納品物受領、支払い
事業承継補助金の補助事業実施期間は、年内までとなっています。
2020年12月31日までに、代表者の交代と、経費に関する支払いを終えておく必要があります。
事業承継補助金ステップ⑤報告書の提出
帆国書類に関しては、交付決定後に詳細が明らかになります。
早く報告を終えれば、補助金の入金も早まることがありますので、さっと済ませてしまうのが良いでしょう。
事業承継補助金は、昨年度2019年は比較的採択されやすい補助金でした。
2020年がどうなるかは不明ですが、代表者の年齢が上がれば上がるほど収益力は落ちるという分析もありますので、計画的な事業承継を進めていきましょう。