ものづくり補助金とは?申請前に知っておくべき事項を徹底解説【令和2年:2020年】

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補助額と採択率のバランスが良く、設備投資を行う企業に取って人気の補助金「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(通称:ものづくり補助金)」。
機械設備のほか、システム開発費用も補助対象となり得る、製造業・ものづくり企業の強い味方です。

この記事は、ものづくり補助金について徹底解説し、疑問や悩みを解決します。

  • 補助金に興味があるけど良く分からない
  • 最新機械を導入する予定があるが、補助の対象となるか詳しく知りたい

注意点

本内容は、2020年(令和2年)のものづくり補助金の公募開始前に執筆しました。
2019年の公募要領基準での記載となるため、2020年では変わる可能性があります。

目次

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ものづくり補助金を活用すると、何が変わる?

「生産性向上に資する革新的なサービス開発・試作品開発・生産性プロセスの改善」に必要な設備投資等にかかる費用の一部が補助されます。

例)生産設備を500万円で購入した場合、250万円が補助される

ものづくり補助金では、標準的な補助額と補助率は以下となっています。

  • 補助額:100万円~最大1,000万円(条件により異なる)
  • 補助率:1/2もしくは2/3(投資額の半額~2/3が補助される)

つまり、補助率から計算された補助額もしくは上限の小さい方の金額が補助されます。

製造業の生産機械を購入しようとすると、数百万~1千万超の投資になることも頻繁にあるでしょう。

中小企業にとっては大きなインパクトのある投資額です。
その負担が一部補助されるので、影響度合いが大きい補助金であることは間違いありません。

特に、補助金は雑収入として利益に計上されます。
圧縮記帳をする等により法人税を繰り延べて単年度負担を軽減できますが、利益額が大きい分、経営に与える影響も理解しておきましょう。

ものづくり補助金を申請できる企業/個人事業主は?

さて、続いては自社が申請できるか確認しましょう。
この補助金を申請するにあたっては、一定の条件を満たすことが必要です。

この条件は2019年公募の内容基準です。最新の公募においては変わる可能性があります。最新の公募要領が公開され次第、こちらに記載の内容も更新します。

中小企業者の定義に当てはまること

中小企業者の定義は以下に準じています。

【ものづくり技術】に応募申請が可能となるのは、「中小企業のものづくり基盤技術の高度化に関する法律」第2条第1項に規定する者。
【革新的サービス】に応募申請が可能となるのは、「中小企業等経営強化法」第2条第1項に規定する者。

具体的には、以下の従業員数もしくは資本金のいずれかが以下であることが必要です。

業種 常勤従業員数資本金
製造業・建設業・運輸業300人3億円
卸売業100人1億円
サービス業
(ソフトウェア業、情報処理サービス業、旅館業を除く)
100人5,000万円
小売業50人5,000万円
ゴム製品製造業
(自動車又は航空機用タイヤ及びチューブ製造業並びに工業用ベルト製造業を除く)
900人3億円
ソフトウェア業又は情報処理サービス業300人3億円
旅館業200人5,000万円
上記以外のその他の業種300人3億円

こちらの判断には以下のポイントがあります。

注意点 「常時」雇用の基準

従業員数は、中小企業基本法に基づく「常時使用する従業員」の人数となります。
常時使用する従業員には会社役員及び個人事業主は該当しません。

中小企業基本法上の「常時使用する従業員」とは、労働基準法第20条の規定に基づく「予め解雇の予告を必要とする者」を従業員と解されています。

※自社が該当するか不明の場合、社会保険労務士もしくは商工会議所/商工会に相談すると確実です

申請時点で、開業済み(創業済み)であること

個人事業主ならば、申請前の日付が開業日となっている開業届を提出済みであることが必要です。法人ならば、履歴全部事項証明書に記載の設立の日が基準となります。

本補助金は金額が大きく、それを投資するだけの企業体力があるかも審査されます。
基本的には創業1年未満の事業者が採択されるにはハードルが高い補助金です。

申請可能な組織形態であること

特に間違いやすいポイントは、一般社団法人やNPO法人、医者、歯科医師は対象にならない(2019年の公募要領基準)点です。
また、2019年の公募では申請するものづくり補助金のコース(ものづくり技術型/革新的サービス型)によって、申請できる法人格に違いがありました。

2020年以降のものづくり補助金がどうなるか、は、公募要領が出てみないと分かりません。
NPOや歯科医師が対象となる補助金もあるので、対象者かどうかは毎回チェックするようにしましょう。

補助金の交付を受けるものとして不適当な者でないこと

  • 暴力団等に関与があるもの
  • 公序良俗に反するもの

は、対象となりません。

ものづくり補助金の対象になる経費とは?具体的に紹介するよ

ものづくり補助金では、経費の種類に応じて5種の経費目に分かれています。
それぞれの支出がどの経費に該当するか判断し、個別に報告を実施する必要があります。

各費目で上限があったり、計画時と金額に変動が生じた場合、費目を跨ぐとややこしいことになる可能性があるので、計画立案時にしっかりと確認しましょう。

①機械装置費

商品の製造機械(NCマシンや3Dプリンター等)や工具、専用ソフトウエアの購入、借用はこちらの費目にあたります。
特に判断に迷う経費を中心に、以下に例を紹介します。

補助対象となる経費例補助対象外の経費例
リース契約の費用(補助事業期間リース契約の費用(補助事業期間
機械の設置に要する軽微な作業費用設置場所の基礎工事や整備工事の費用
一般事務ソフトウエア、導入済みソフトの更新費用
流通性の無い中古の機械設備(価格設定の適切性が不明)

②技術導入費

本事業遂行のために必要な知的財産権等の導入に要する経費が該当します。
知的財産を保有する企業に支払う技術的なアドバイス費用なども含まれますが、私の経験上余りこちらの費目を使うケースは多くない印象です。

③専門家経費

大学教授や士業その他専門性のある有資格者のアドバイスを受ける際に、こちらの経費を計上できます。研究機関との共同事業や、メディカル機器に関する医師等への専門家経費を計上するケースを見かけます。

注意点

確認書を発行した認定支援機関と、事業計画の作成を支援する専門家はこちらの経費の対象にはなりません。補助金の事業計画書の作成サポート費用を補助金の経費にごまかす事例が多発したための措置と解釈できますね。

④運搬費

運搬料、宅配・郵送料等に要する経費となります。
こちらの経費も、実際に申請対象とするケースはそこまで多くありません。

実際には、機械装置費で上限を超える申請になることが多いですからね…。

⑤クラウド利用費

こちらは費目の判断がつきにくく、結構扱いに悩んでいます。
自社ソフトウエアの開発費用は①機械設備費ですし、自社保有のサーバーの費用は対象となりません。

公募要領の内容をそのまま引用すると、定義はこのようになります。

「自社が保有していないサーバーにインターネット等を介して接続し、アプリケーションの機能の提供を受け、またデータ保存領域の割り当てを受ける」ための経費を「クラウド利用費」として補助対象とする

<クラウド利用費として算定できる経費>
・初期費用
‐ 自社が保有しないサーバーの初期設定及びアプリケーションの構築・データ移行経費(提案された事業計画に特化したものに限る)
‐ アプリケーションを提案された事業計画のためにカスタマイズする経費
‐ 専用アプリケーションの利用マニュアルの作成に係る経費

・月々の利用料(事業実施期間中の経費に限る)
‐ 自社が保有しないサーバー及びそれから提供されるアプリケーションの利用料
‐ 自社が保有しないサーバーに接続するための通信費
(固定回線・無線回線等接続の形態は問わないが、専らクラウド利用のためのものに限る)
‐ 専用アプリケーションのサポート経費

うーん、やっぱりよくわかりにくい…。
既存のクラウドサービスの導入費用という理解で合っているのでしょうかね?

AWSの費用やAWSに搭載するクラウドサービスの費用も対象になるということでしょうか?でも、クラウドサービスの費用も開発が伴うと機械装置費になるんですよね。カスタマイズ程度であれば可になるんでしょうかね。

ただ、基本的には補助事業として新たな取り組み(ある程度の革新性のある事業)を実施しないと採択されにくいので、既存クラウドサービスと連携するような新規のサービスを開発する、というケースが現実的でしょうかね。

ものづくり補助金の申請から補助の入金までの流れとは?

2020年から、通年で公募される仕組みになりました。
まだ詳細は公開されていないため推測を含みますが、以下のような流れになると予想されます。

補助金の申請から報告までの流れのイメージ図

ものづくり補助金は、3か月ごとに採択結果を発表する予定とされています。

ものづくり補助金を活用するメリットとデメリット

ものづくり補助金を活用するメリット

メリットは、言うまでもなく補助が降りる事ですが、他にもいくつかあるので挙げてみます。

  • 最大1000万円の補助金が貰える
  • 採択件数が比較的多く狙って取りやすい
  • 短期~中期の事業計画を改めて見直す良い機会になる
  • 新たな挑戦となる設備投資やシステム開発の後押しになる
  • ものづくり補助金に初めて挑戦する事業者は相対的に採択されやすい

新サービスを開発したり、最先端の生産設備を導入して大幅な生産性の向上を狙う、等、経営に大きなインパクトを与えうるチャレンジを実施できることが最大のメリットです。

ものづくり補助金を活用するデメリット

一方で、デメリットも間違いなく存在します。
補助金解説セミナーに登壇した際も、参加者の何割かは申請を見送る判断をしたケースがあります。

  • 採択が発表されるまで、補助対象経費の取り組みを進めてはならない(契約/発注してはいけない)
  • 報告作業がや管理が手間で、各種書類を整える必要がある

本業とは異なる部分で手間が生じることが、一つのデメリットですね。
また、採択されるまで待たないといけないということで、設備投資を半年以上先延ばしすることは難しいとの判断から見送りということもありました。

補助金の勘違いポイント

ものづくり補助金に限らない話ですが、よくある勘違いポイントを纏めました。

補助金は後払いなので、一旦全額支払う必要がある

基本的には、補助金は経費の支出が先で、報告を行った後に補助金が振り込まれる流れになります。

従って、一旦全額を自己負担で支出できる資金的余裕が必要です。
ものづくり補助金等の補助額が大きい補助金を活用するときは、銀行融資とセットで計画を立てるのが一般的です。

なお、金融機関側も、補助金が採択されていれば融資を通しやすくなります。
事前に補助金を申請すること、採択時には融資を検討していることを交渉しておくと良いでしょう。

全額補助されるケースは稀であって自己負担が必要

ごく稀に経費の全額(100%)補助となる補助金も募集されますが、基本的には1/2~4/5の範囲の補助となるのが一般的です。

つまり、何割かは自己負担をすることが前提となります。
補助金を貰えるから新しい投資をするのではなく、投資分の売上/利益に効果を得られることを計画した活用を行いましょう。

厚生労働省の助成金と勘違い・申請しても全員が補助される訳ではなく、不採択もある

最も多い勘違いが、厚生労働省が扱っているキャリアアップ助成金に代表される助成金と混同することです。
厚生労働省系列の助成金と補助金は、いくつか異なる点があるので誤解を生じないように注意しましょう。

経済産業省の補助金
(経済成長が目的)
厚生労働省の助成金
(雇用の安定が目的)
売上拡大のための投資
(設備投資や運転資金)
雇用に関する費用
(一部、設備投資などが含まれる)
事業計画の審査による合否がある資格要件を満たせば、基本的には受給できる
中小企業診断士や行政書士、税理士が専門性を有する
申請代行会社も多数存在する
社会保険労務士の法定独占業務
申請代行会社も多数存在する
(お抱え社労士がいる)

補助金の話で
「100%獲得できる」「自己負担無くタダでできる」
といった話を耳にした場合は、基本的に胡散臭い目を向けるのが良いでしょう。

ものづくり補助金を申請するにあたっては何をすればいい?

補助金は、準備が重要です。
申請の公募が始まる前からできることがあるので、事前に準備をしておきましょう。

ものづくり補助金の申請までのフロー

例年は、春ごろに募集が開始され、夏手前ごろに結果が発表される流れが定番でした。
ですが、2020年からは変わって、通年での募集となります。

従って、事業計画と経営状況に合わせて申請するということがやりやすくなりました。
まずは、予定する投資を含めた見通しを立てることが必要です。

1
中期の事業イメージを立てる

どのような設備投資を行い、どのようにして売り上げを立てるか、事業計画のイメージをまずは立てましょう。目安としては最低3年~5年の中長期の計画を立てることが重要です。当然、現状が分かる経営数字が必要になるので、決算書や試算表も準備が必要です。

2
公募開始前でも、中長期計画のイメージが出来たら支援機関や専門家に相談

ある程度の投資計画を立てることができたら、なるべく早めに支援機関や専門家に相談しましょう。
狙いは、経営革新計画の申請など事前に準備することで採択されやすくなる手段を取れないか検討することにあります。

3
専門家と相談しながら事業計画書を作る

補助金の申請書は、残念ながら未経験の申請者が情報の無い状態で自作しても、採択率はあがりません。審査ポイントに応じた記述を意識しつつ、どのように投資後に経営が変わるのか、収益を得られるのか、のストーリーを意識して記述する必要があります。

4
申請書を提出し、結果を待つ

2020年から電子申請となる見通しです。提出方法が変わるので、よく確認しましょう。

5
採択されたら、「採択の通知書」の到着を待って契約/発注

WEBなどでの結果発表の日ではなく、書類の到着を待ってから契約/発注する必要があります。

報告に関しては、2020年から恐らく変化がある見通しなので、詳細が分かり次第別途紹介します。

ものづくり補助金を申請するにあたって相談できる場所は?

まず第一の候補として、地域の商工会議所/商工会に相談するのがお勧めです。
理由は、どの地域においても存在する、伴走者たることを期待された公的支援機関だからです。

本店登記先の住所から該当する商工会議所/商工会を検索することで、調べることができます。

参考となるサイトをチェック

その他の相談先候補は、以下の支援機関があります。

ものづくり補助金は、その補助金の仕組み上、認定支援機関の確認書が必要です。
大抵は顧問税理士に依頼するか、融資とセットでメインバンクに依頼するか、が多い印象です。

どちらに相談するかを含めて準備をしておくと良いでしょう。

補助金業者って、ぶっちゃけどうなの?

こんな分かり易い悪徳業者がいるかは分かりませんが…

補助金に関する業者は、実際かなりトラブルが多いです。
不法行為上等で国/自治体から金を引っ張ることを提案してくる業者も数多くいます。
(実際に、私もその話を耳にしました)

私個人の考え方としては、小規模事業者持続化補助金程度であれば自力で申請する丁度いい分量の補助金ですが、ものづくり補助金に関しては自力申請は少々難易度が高いかもしれません

補助金の採択を目的とするのではなく、生産性向上、売上アップを達成するために何年間も継続して付き合うことができる支援者とともに申請にチャレンジするのが、専門家との理想的な関係だと思います。

ものづくり補助金の申請書については、特に書類作成を代行してくれる業者も沢山いますが、気を付けるべきチェックポイントを紹介しておきます。

補助金業者に依頼する場合のチェックポイント

違法行為を提案されてないか
お金の動かし方に怪しさは無いか?補助金の公募要領に対して不正な提案をされてないか?を確認しましょう。よくあるケースは以下のパターンがあります。
・申請期間外の経費も裏で調整して計上しようとする
・実態と異なる経費を補助金に計上しようとする
・キャッシュバックなどで裏で返金しようとする
報告をしっかりサポートしてくれるか
補助金は採択されて終わりではなく、報告を終え、しっかり事業が稼働することが目的です。
最低でも、報告の完了までサポートしてくれることを確認しましょう。
適切に報告できなければ、補助金が降りないこともあり得ます。
補助金を使って嘘/間違い/誤謬のある営業活動をしていないか
補助金はお金が貰えるという仕組みから、誤解や嘘も含めたうさん臭い営業が跋扈しています。
SNS広告でも間違いや誤解を招く広告をよく目にします。そういう業者は基本的な知識が怪しいので避けるべきポイントです。よくあるケースはこちら。
・誰でも確実に貰えるような書き方をしている
・貰わないと損!といった表現をしている
・リスクなしを謳っている

ものづくり補助金は、補助額が大きく設備投資を要する事業においては申請もし易い、使い勝手が良い支援制度です。
その分、所謂補助金の採択報酬を目当てにした補助金業者も蠢いている業界なので、申請者の皆さまは見る目を鍛えてチャレンジしてみてくださいね。